図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することをもっとも重要な任務とする。
1. 日本国憲法は主権が国民に存するとの原理にもとづいており、この国民主権の原理を維持し発展させるためには、国民ひとりひとりが思想・意見を自由に発表し交換すること、すなわち表現の自由の保障が不可欠である
第2 図書館は資料提供の自由を有する
1. 国民の知る自由を保障するため、すべての図書館資料は、原則として国民の自由な利用に供されるべきである。
図書館は、正当な理由がないかぎり、ある種の資料を特別扱いしたり、資料の内容に手を加えたり、書架から撤去したり、廃棄したりはしない。
提供の自由は、次の場合にかぎって制限されることがある。これらの制限は、極力限定して適用し、時期を経て再検討されるべきものである。
(1) 人権またはプライバシーを侵害するもの
(2) わいせつ出版物であるとの判決が確定したもの
(3) 寄贈または寄託資料のうち、寄贈者または寄託者が公開を否とする非公刊資料
2. 図書館は、将来にわたる利用に備えるため、資料を保存する責任を負う。図書館の保存する資料は、一時的な社会的要請、個人・組織・団体からの圧力や干渉によって廃棄されることはない。
3. 図書館の集会室等は、国民の自主的な学習や創造を援助するために、身近にいつでも利用できる豊富な資料が組織されている場にあるという特徴を持っている。
図書館は、集会室等の施設を、営利を目的とする場合を除いて、個人、団体を問わず公平な利用に供する。
4. 図書館の企画する集会や行事等が、個人・組織・団体からの圧力や干渉によってゆがめられてはならない。
第3 図書館は利用者の秘密を守る
1. 読者が何を読むかはその人のプライバシーに属することであり、図書館は、利用者の読書事実を外部に漏らさない。ただし、憲法第35条にもとづく令状を確認した場合は例外とする。
2. 図書館は、読書記録以外の図書館の利用事実に関しても、利用者のプライバシーを侵さない。
3. 利用者の読書事実、利用事実は、図書館が業務上知り得た秘密であって、図書館活動に従事するすべての人びとは、この秘密を守らなければならない。
第4 図書館はすべての検閲に反対する
1. 検閲は、権力が国民の思想・言論の自由を抑圧する手段として常用してきたものであって、国民の知る自由を基盤とする民主主義とは相容れない。
検閲が、図書館における資料収集を事前に制約し、さらに、収集した資料の書架からの撤去、廃棄に及ぶことは、内外の苦渋にみちた歴史と経験により明らかである。
したがって、図書館はすべての検閲に反対する。
2. 検閲と同様の結果をもたらすものとして、個人・組織・団体からの圧力や干渉がある。図書館は、これらの思想・言論の抑圧に対しても反対する。
3. それらの抑圧は、図書館における自己規制を生みやすい。しかし図書館は、そうした自己規制におちいることなく、国民の知る自由を守る。
図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまで自由を守る。
1. 図書館の自由の状況は、一国の民主主義の進展をはかる重要な指標である。図書館の自由が侵されようとするとき、われわれ図書館にかかわるものは、その侵害を排除する行動を起こす。このためには、図書館の民主的な運営と図書館員の連帯の強化を欠かすことができない。
2. 図書館の自由を守る行動は、自由と人権を守る国民のたたかいの一環である。われわれは、図書館の自由を守ることで共通の立場に立つ団体・機関・人びとと提携して、図書館の自由を守りぬく責任をもつ。
3. 図書館の自由に対する国民の支持と協力は、国民が、図書館活動を通じて図書館の自由の尊さを体験している場合にのみ得られる。われわれは、図書館の自由を守る努力を不断に続けるものである。
4. 図書館の自由を守る行動において、これにかかわった図書館員が不利益をうけることがあってはならない。これを未然に防止し、万一そのような事態が生じた場合にその救済につとめることは、日本図書館協会の重要な責務である
(1979.5.30 総会決議)
★これが「図書館の自由に関する宣言」の全文です。民間企業が図書館の指定管理者となって、国民の知る自由を保障する機関になれるのでしょうか?
また、図書館の本の利用履歴を営利活動のために利用するようなことはないのでしょうか?
仮に指定管理者制度が導入されたら、市民の知る権利を保障する図書館の基本理念を遂行することができるだろうか
私は、このほど、伊万里市民図書館には指定管理者制度を導入しないと決断しましたが、その背景には、民間業者への丸投げだけはしたくないという一念があったからです。
税収が減り、国からの交付税が減り続ける中で、医療や福祉の予算は増え続けるからといって、図書館への優先順位を下げては断じてなりません。将来、市民が不幸になることはすべきではありません。
伊万里市民図書館は、市民とともに蓄積された図書館能力を有しています。図書館サービスの企画立案も豊富です。どうか今後とも市民の皆さんとの協調関係を構築しながら伊万里市が責任を持って運営しますので、よろしくお願いします。平成21年4月1日 伊万里市長 塚部芳和