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三田市「図書館建設作文コンクール」最優秀作を読みました@ ('_')



★1988年7月三田市の図書館建設に先立ち、市の図書館建設担当が「図書館建設作文コンクール」を実施していました。1988年10月19日「六甲タイムス」に最優秀作「まちづくりを拠点としての図書館」が掲載されています

郷土の図書館は郷土の歴史を伝えていくことが大きな役割の一つです。作文の中でも以下のようなことが提案されています

「三田にゆかりのある人々の業績を紹介すること」
「三田の発展・変貌を記録し続けること」
「郷土に関する地道な草の根的研究をサポートしつつ、それを蓄積、集大成し、紹介すること」

郷土の文化の発展に図書館は非常に大切な存在です。郷土のことを研究し、蓄積し、提供していくということは、長期的に取り組んでいく必要があります。指定管理者制度の図書館では、3〜5年で業者が入れ替わることになりますので、事業の継続性に大きな支障が生じます。また本社が東京にある業者が、5年以下という短期間で三田の文化の発展を担えるとも思えません。実際、TSUTAYAを運営するCCCが指定管理者となっている武雄市図書館では、蘭学館という郷土の歴史を伝える施設が、CD・DVDレンタルスペースになってしまいまい、郷土の歴史を伝えるという役割を放棄しています

これまで、三田のまちづくりを支えてきた図書館には、今後も未来のまちづくりを支えていく使命があります。指定管理者制度の図書館では、委託業者は利益の確保が優先で、郷土の文化を大切にすることができません

当時、この作文が最優秀作に選ばれたということは、三田市が考える図書館像とこの作文で描かれている図書館像が重なっていたのでしょう。今、図書館に指定管理者制度を導入しようとしている三田市が、どのような図書館像を描いているのかが全く伝わってきません。市議会の答弁でも「民間活力の導入」、「これまでのサービス水準をより一層向上」など、抽象的でなぜ指定管理者制度を導入するのかの理由が分かりません。新聞報道もほとんどなく、三田市は説明責任を果たしていないと思います
 


全文引用

図書館建設作文コンクール特選 一般の部

「まちづくりを拠点としての図書館」(沢田さん)

 図書館の従来のイメージは、静的、権威的求心的なところがあったと言えるのではないだろうか。まさに、この三つのイメージ故にそこに出入りする人の知的好奇心と教養ある知識人としてのステイタスシンボルを満足させるものとなり得たと同時に、古代から現代に至るまでの人類の精神的遺産を継承することができたといっていい。
 しかし反面、この三つのイメージ故に、多くの人々にとって縁遠いものになってしまったのも事実である。静かなるが故に閲覧室は受験生などの勉強部屋と化し、その権威性の故に親しみある施設とはなり得ず、その求心性故に閉ざされた雰囲気を与えてしまっている。
 そこで私が提案したいのは「まちづくりの拠点としての図書館」ということである。
 人口数十万の田園都市三田は、大阪とか神戸といった独自の文化を持つ大都会からほどよく隔たったところに位置している。この一定の距離を保っているという立地のよさを見失ってはならない。つまり、大阪や神戸をまねるのではなくて、いまの三田にしかできないことに挑戦していくべきであると考える。
 いま三田は、北摂三田ニュータウンの入居も本格化し、新しい住人が増えつつある。古来、文化は異なった文化を持つ人々の出会いとぶつかりあいの中で発展してきたといわれている。そういった意味では、今まさに三田は文化発展の一大契機のなかにあるといっていい。文化発展の担い手はまぎれもなく人間である以上、「人間」に焦点をあて図書館を考えるべきであろう。
 こういった観点から、人と人、人と事物の交流拠点としての図書館を提案したいのである。図書館が交流拠点となれば、そこに新しい文化発展の芽が芽生え、まちの活性化へとつながっていくと確信するからである。
 では「まちづくりの拠点としての図書館」とはどういった性格を持つべきであろうか。先にあげた三つのイメージからそのあるべき性格を述べることにする。
 まず第一に、静的ではなく「動的」であること。
 第二に、権威的ではなく「解放的」であること。
 第三に、求心的ではなく「遠心的」であること。
 言い換えれば、誰もが気軽に出入りできる雰囲気を持つ、刺激的な「情報発信基地」としての図書館ということになろうか。
 この雰囲気と情報発信性をいかにして確保していくか、若干の提案をしてみたい。
 まず第一に、常設展示スペースを確保し、三田にゆかりのある人々(三好達治、九鬼・小寺一族など)の業績を紹介すること。まちづくりは、我がまちを知り、我がまちに誇りをもつところから始まる。我がまち三田の凝縮された文化のエッセンスが一目で見ることができるような展示が欲しい。
 第二に、三田の発展・変貌を記録し続けること。いま急激に変化しつつある三田を可能な限り、ヴィジュアルに記録に留めることを提案したい。二十世紀末の貴重な資料となるだけでなく、まちづくりを共に考えていくにあたって格好のイメージアップの材料となるはずである。
 第三に、自費出版活動を支援すること。郷土に関する地道な草の根的研究をサポートしつつ、それを蓄積、集大成し、紹介することができれば、我がまち三田を深く知ることに通じていくだろう。
 第四に、各分野の第一線で活躍している三田在住の人々を招いて、直かに接する場を設けること。一流の人と接する機会が多ければ多いほど、文化的な刺激は増す。将来、三田から有為な人材が輩出することを夢見て。
 第五に、各種市民グループの交流拠点を設けること。自発的な市民グループの数は相当数にのぼると思われるが、いずれもその分野の枠から出ることなく細々と活動しているのが実情。異なったグループが出会うことができれば、そこに新たな展開が見られるかもしれない。
 これまで図書館は、どちらかといえば、過去の遺産を受け継ぎ守ることでその都市の文化性の象徴となっていた。そこから一歩踏み出し、その豊富な情報を背景に、未来のまちづくりを支えたといえる図書館があってもいいのではないだろうか。幸い、我がまち三田は、空間的にもアイデンティティを形成しやすい領域をもっており、時間的にも新旧住民が入り混じって今後どう展開していくか楽しみな時期にきている。この図書館がまちづくりの拠点として機能したとき、全くあたらしいタイプの図書館を三田市はもつことになるだろう。


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